気象トピックス・コラム
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寒いときには、何気なく…

 

いまが、1年の中で最も寒い季節です。あすからの1週間も、めったに来ないような非常に強い寒気が日本列島に流れ込む予想になっていて、平年以上に寒い日が続きそうです。

 

このように寒くなると、私たちは、何気なく、腕を組んだり、背中を丸めたりします。この仕草は、私たちの防御本能から起こるものです。できるだけ体を小さくして、体内の熱が外に逃げないようにしているのです。外に触れるからだの表面面積が小さくなれば、それだけ体内の熱を奪われないですむからです。

 

このようにして、私たちは、身を縮めて寒さをしのごうとしているのですが、寒さがさらに厳しくなって、それでも体温の低下が防げないときには、体が震えだします。

 

私たち人間は、恒温動物なため、周りの気温に関係なく、体温が一般に36℃~37℃くらいに保たれています。この体温よりも高くなると、私たちは皮膚から汗を出して熱を発散し、体温を下げようとします。逆に、低くなってくると、筋肉や内臓の働きによって熱を生み出しますが、低くなりすぎると、内臓からは熱を生み出すのに時間がかかるため、それよりも早く筋肉を動かすことで、熱を生み出そうとします。これが「震え」です。私たちは、震えることによって筋肉を興奮させ、血液の流れを良くして、血管の末端まで血液を送ることによって皮膚の温度を上げています。この「震える」という仕草が、一番効率よく熱を生み出すため、外気の寒さにより体温が低くなってしまったときには、自然と体が震えるようになっているのです。

 

私たちが寒いときに思わずしてしまう仕草は、無意識のうちに起こる、低温から命を守るための大事な手段のひとつです。

 

参考文献:「人はなぜ天気に左右されるのか」原田龍彦(河出書房新社)