気象トピックス・コラム
過去の記事
竜巻

 

「竜巻」というと、何を思い出しますか?私は、竜巻に飛ばされて少女ドロシーが不思議な国へ飛ばされてしまう「オズの魔法使い」です。アメリカでは、竜巻のことをトルネードと言います。この話の舞台となっているカンザス州は、実際に竜巻が多く、アメリカで有名な「トルネード街道」と呼ばれる場所のひとつに含まれています。竜巻から身を守るために、家には地下の部屋があり、竜巻が近付く恐れがあると地下に逃げるということです。

 

「竜巻」は、その規模によってランクがあり、F0~F5までの6段階になっています。これは、1971年にシカゴ大学の藤田哲也博士が、発生した被害の状況から、風速を大まかに推定するために設けたランクです。頭につく「F」は、藤田博士の頭文字がつけられています。
日本においては、気象庁が把握している1981年以降について、最高でF3ランクの竜巻が4件記録されていますが、F4以上のランクの竜巻はまだ確認されていません。しかし、アメリカでは、F5ランクの竜巻が発生することもまれではなく、日本で起こる竜巻とは桁違いに大きく、多数の犠牲者をだすケースも珍しくないのです。

 

さて、「竜巻」が発生しやすい気象条件って、いったい何なのでしょうか?アメリカの「トルネード街道」では、ロッキー山脈からの冷たい空気と、メキシコ湾からの暖かい空気がぶつかって、大気の状態が非常に不安定になり、巨大な積乱雲が発達したとき、その下で「竜巻」がしばしば発生します。特に5月~6月に多く、まさに今が竜巻の季節です。

 

日本はというと、9月~10月が最も多く、これは、台風による積乱雲の発達がその原因のひとつです。しかしながら、5月は、地上付近は春の暖かい空気に覆われますが、ときに、上空には冬を思わせるような強い寒気が流れ込むと、同じように大気の状態が不安定になり積乱雲が発達し、「竜巻」が発生しやすい気象条件になることがあるので、油断はできません。
実際、ことしは、5月に入ってすぐに、上空に寒気を伴った低気圧の影響を受け、大気の状態が不安定となりました。竜巻のニュースこそ入ってはきませんでしたが、雷の他、ひょうやあられなどが観測されました。

 

大気の状態が不安定になることが多くなるのは、これからの季節です。雲の底から地上に伸びる漏斗(ろうと)状の雲を見た、ゴーッといういつもと違う音を聞いた、真っ黒な雲に覆われて昼間なのに暗くなった、気圧の変化で耳に異常を感じた、などの兆候があったら、それは「竜巻」のサインです。頑丈な建物に避難し、カーテンを引き、できるだけ窓から離れるようにしましょう。竜巻は局地性が強く、めったに遭遇するものではありませんが、大変激しい現象です。命の危険がありますので、注意してください。