気象トピックス・コラム
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東京タワーは空気の監視役

 
今日12月23日は天皇誕生日であるとともに東京タワーの59歳の誕生日です。東京タワーは1958年のこの日にオープンし、日本一の高さ333mの電波塔や観光名所としての役割を担ってきました。2012年に東京スカイツリーができて日本一の高さや役目を譲りましたが、今も東京の名所となっています。ところで東京タワーは、電波塔や観光名所としての役目の他にも意外な仕事を任されているのをご存知でしょうか。
 
それは大気汚染などの測定で、 東京都環境局が気温や風などの気象データや光化学オキシダントや二酸化窒素などの大気汚染物質の測定をしています。それぞれいくつかの高さで1時間ごとに1日に24回測っており、気温は地上4m、64m、103m、169m、205m、250mで測定しています。
このように、東京タワーは地上では入手できない高層のデータを提供してくれているのです。一般に、高層観測は1日に1回定時でしかしていないことが多いので、定点でここまでの高さまで、各層ごとに、東京のど真ん中で休みなく観測してくれているのは驚きであるとともに、これだけ細かく長年取り続けたデータは貴重なものなのです。
通常、気温は上空へ行くほど低くなっていきます。 ところが、上空の方が地面付近よりも気温が高くなることがあり、この気温が逆転している空気の層は逆転層と呼ばれています。逆転層は接地逆転層、沈降逆転層、前線性逆転層など気象条件によっていくつか種類がありますが、冬に起こりやすい逆転層は接地逆転層です。高気圧に覆われ穏やかに晴れた夜間は、地面付近の熱が奪われる放射冷却が強まって気温が低くなることがあるからです。
逆転層ができると、大気中の汚れが地面付近に留まるので大気汚染が進みます。昔の東京はスモッグの被害が深刻でしたが、今は環境への取り組みも前進し、汚染は減ってきています。東京タワーは、気象状況や大気汚染物質を測ることで空を清浄にする重要な役割を担っているのです。また、光化学オキシダントの測定により得られたデータは、夏の日中起きる光化学スモッグなどの研究にも使用されています。
 
このように、まるで空の守衛さんのように休みなく空を見張ってくれている東京タワーは空気の監視役なのです。今日は、東京タワーの誕生日をお祝いしながら、この日々の測定にも感謝したいですね。