気象トピックス・コラム
過去の記事
PM2.5

 
月日の経つのは早いもので3月に入りました。皆さんは春の季節を象徴するものに何を思い浮かべますか?梅や桜など様々ありますが、その一つに霞があり、平安時代の頃から秋の霧、春の霞として多くの和歌に詠まれてきました。
 
春になると、冬にはすっきりと見えていた遠くの風景がぼんやりと見えることがあり、これは春がすみと呼ばれています。春は花粉やほこり、煙や黄砂などの空気中に浮遊する微粒子が多く、気温も高くなるので大気中の水蒸気の量も多くなり、風景がかすむのです。
 
春に空が霞む原因には花粉やほこり、煙や黄砂など様々ありますが、その中で特に近年話題になっているPM2.5があります。PM2.5は、大気中を浮遊する微細な粒子の中で、大きさが2.5マイクロメートル以下のものの総称であり、具体的な物質の名称ではありません。PM2.5の粒子の大きさは、髪の毛の太さやスギ花粉の大きさよりも小さいため、肺の奥深くにまで入り込みやすく、喘息や気管支炎などの呼吸器系疾患や循環器系疾患などのリスクを上昇させると考えられています。発生源は、工場や車などから発生する排気で、中国での呼吸器などへの健康被害のニユースで注目されるようになり、日本にもPM2.5が運ばれてくる気をつけた方が良い気象状況になる時があります。
PM2.5に注意すべき天候は、意外にも春の穏やかな晴天の日なのです。春に晴れの天気をもたらすのは高気圧です。高気圧の圏内は、上空から地面付近に空気が吹き下りてくる場所です。低気圧などによって中国大陸のPM2.5が上空へ吹き上げられると、偏西風に乗って日本上空へ運ばれます。そこに高気圧がやって来ると、下降気流によってPM2.5は地面付近に降りてくるので、地面付近のPM2.5の濃度が高くなるのです。
PM2.5の濃度が上昇し、汚染がひどくなりそうな場合は、地元の自治体から外出をできるだけ控えるように注意が呼びかけられることもあるため、こうした情報を確認することが大切です。
 
このように、穏やかに晴れた日には上空に飛んできたPM2.5が地上まで下りてくるので注意が必要なのです。
 
———————————————————–
 
【追記 2018/5/30】PM2.5予測システム「SPRINTARS」
 
九州大学応用力学研究所では、大気中に浮かんでいる微粒子(PM2.5や黄砂など)が気候変動に及ぼす影響を調べるために、ソフトウェア「SPRINTARS」を開発し、それを用いて研究を行っています。PM2.5濃度の予測を毎日実施し、ウェブサイトや多くの報道機関を通して、呼吸器・循環器系疾患やアレルギーのある方など、一般の皆様にとっては不可欠な情報として利用されています。
九州大学応用力学研究所では、継続的な情報提供を実現していくために、皆様のご支援を求めています。
 

「SPRINTARS RUNNING PROJECT」は終了しました。

 

*ウェブサイト「SPRINTARS」