気象トピックス・コラム
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ソメイヨシノ

 

きょうは、「日本さくらの会」が定めた「さくらの日」です。3×9(さくら)=27の語呂合わせの他、二十四節気の中の七十二候のひとつ「桜始開(さくらはじめてひらく)」の時期が重なるということで、この日を「さくらの日」にしたそうです。

 

気象台では、桜の開花と満開の観測をしているのはよく知られています。南北に長い日本列島では、およそ4ヶ月かけて全国でサクラが楽しめます。まず、奄美、沖縄地方では「ヒカンザクラ(緋寒桜)」が咲きます。ことしはすでに1月中に開花し、2月には満開を迎えています。また、北海道では、「えぞやまざくら(蝦夷山桜)」を観測していて、だいたい5月の大型連休中に開花し、すぐに満開を迎える所が多くなっています。その間に、九州から東北にかけては、「ソメイヨシノ」を観測しています。

 

ところで、九州から東北にかけて広く観測される「ソメイヨシノ」が、日本では最もメジャーなサクラであるにも関わらず、その歴史は意外と浅く、挿し木などで作るクローンであることはあまり知られていません。

 

「ソメイヨシノ」は、「エドヒガンザクラ」と「オオシマザクラ」の交配によってできた桜です。元々は、江戸時代末期に、いまの東京の豊島区のあたりにあった「染井村」の植木屋さんで売りだされました。その植木屋さんは、奈良にある「吉野山」のサクラを、わざわざ奈良まで行かなくとも江戸で見ることができることを売りにして「吉野桜」と名付けて売り出し、大ブレイクしたそうです。その後、明治時代に入ってから、いまの東京の標本木である靖国神社の他、都内の多くの場所に挿し木として植えられました。ところが、本来の「吉野桜」は、葉と花が同時に開花する「ヤマザクラ」であり、「エドヒガンザクラ」と「オオシマザクラ」の交配種ではありません。このため、明治時代に、吉野の「ヤマザクラ」と区別するために、その地名の「染井」を拝借して「ソメイヨシノ(染井吉野)」と名付けられたのです。その後、全国各地に植えられるようになり、いまは、日本の多くの地域で見ることができるようになりました。

 

私の友人が駒込に住んでいますが、駅のホームの発車メロディに「さくらさくら」が使われているとのことです。駒込は、「ソメイヨシノ」発祥の地としてその歴史を今に伝えているのですね。