気象トピックス・コラム
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白露
 
きょう9月7日は、二十四節気のひとつ「白露(はくろ)」です。大地が少しずつ冷えてきて草に露が宿るころといわれ、夏の名残ある中にもかすかに秋の気配が感じられるようになってきます。

「露」は、夜間に気温が低くなることによって空気中に含みきれなくなった水蒸気が水滴となり、木の葉や草などに付着したものです。露は1年中見られますが、特に朝晩と日中の気温差が大きくなる秋に多くみられるため秋の季語となっています。

秋の季語といえば、「肌寒(はださむ)」があります。私たちは季節にこだわらず「肌寒い」といいがちですが、もとは秋が由来です。俳句の世界では伝統的に、「秋の冷気が肌に寒く感じられること」という意味で、夏の終わりから秋にかけて「肌寒(はださむ)」が使われます。

その他にも秋の涼しさや寒さを表す言葉は多くあります。たとえば、暑い夏が終わり、秋の初めに感じる涼しさは「新涼(しんりょう)」です。夏の暑さから解放された喜びを込めて使われます。秋も深まり、空気に冷たさを感じるようになると、「冷やか」になります。夏の暑さもすっかり収まり、秋の心地よい感覚が含まれます。秋も終わりに近付き、晩秋のころの寒さは、「そぞろ寒」や「やや寒」です。「そぞろ寒」は、なんとなく寒さを感じるとき、「やや寒」は、それよりもさらに寒さを実感するときに使います。

このように昔の日本人は、体で感じる微妙な涼しさや寒さを敏感に感じ取って、秋の空気の移り変わりを巧みに表現していました。暑さの厳しかった2020年ですが、白露を迎えたこれからの季節は、北から、山から、内陸から、「秋の涼しさ」を感じるようになり、やがて里にも秋がきて、寒さの厳しい冬へ向かいます。