気象トピックス・コラム
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恐るべき春一番

 

きょう2月15日は、春一番名付けの日です。春一番という言葉は、石川県能登地方や三重県志摩地方以西で昔から用いられており、諸説ありますが、1859年3月17日(安政6年2月13日)、長崎県の壱岐で強い南風が吹いて漁師の乗る船が転覆し、53人の死者を出す事故があり、漁師達はこの強風を恐れて春一番と呼ぶようになりました。春一番という語の新聞での初出は1963年(昭和38年)2月15日の朝日新聞朝刊での「春の突風」という記事であるとされ、このため2月15日は「春一番名付けの日」とされています。

 

気象庁では春一番は統計上目安としての定義を定めています。地方により多少異なりますが、関東地方の場合、立春から春分までの間に日本海を進む低気圧に向かって南寄りの風が平均風速8m以上吹き、さらに前日よりも気温が上昇していれば春一番が吹いたということになります。しかし、昨年2017年2月17日は、サハリン付近の低気圧で春一番と認定されており、「日本海を進む低気圧に向かって」という条件には柔軟性があります。また、2013年2月2日には、南から暖かい風が吹き込み全国的に気温が上昇しましたが、立春の前であったため、春一番と認められませんでした。このように、1日でも期間に入っていないと「春一番なし」と統計上なる年もあるのです。

 

さらに、春一番は全国全ての地方で発表される訳ではなく、春一番のような暖かくて強い風が吹いてもまだまだ冬の寒さの続く北海道や東北、日本海側に低気圧があっても警戒が必要なほど強い風の吹かない沖縄では発表されません。しかし、北海道などでは春先に猛烈な南風で海難事故が発生することもあります。

 

ここで少し専門的なお話になりますが、春一番のメカニズムを紹介します。春が近づくと日本海側を低気圧が通過することが多くなります。低気圧に向かって南から暖気が流れ込むと低気圧の後ろにある寒気との温度差が大きくなり、低気圧は発達します。低気圧が発達すると南寄りの風が強まり、春一番が吹くことになるのです。
注意点としては、強い風による海難事故だけでなく、日本付近に南から暖かい空気が流れ込むため、大気の状態が非常に不安定となり、落雷や竜巻などの激しい突風の恐れもあります。1978年2月28日には、東京地方で春一番による竜巻が発生し、東西線の車両が橋の上で脱線・転覆する事故がありました。また、積雪の多い所では雪崩にも注意が必要です。1972年3月20日の春一番では、富士山で暴風雨と雪崩のため、死者・行方不明者24人を出す事故が起きました。さらに、日本海側ではフェーン現象(気温上昇と空気の乾燥)が発生して大火災の発生する恐れもあります。

 

春一番の期間だけでなく、春先は日本海で猛烈に低気圧が発達することがあります。2012年4月2日から3日にかけては、低気圧が急発達しながら日本海を通過し、北日本から西日本にかけて暴風、高波、前線通過に伴い局地的に大雨となりました。鉄道の運休や航空機の欠航が相次ぎ、停電、建物やビニールハウス被害、電柱が倒れたり車が横転する被害が発生しました。南北の温度差が大きくなる冬から春にかけては低気圧がより発達しやすくなるため、厳重な注意が必要です。

 

春一番が吹いた翌日または翌々日には気温が下がることもあります。これは、低気圧が通過した後は、西高東低の冬型の気圧配置に一時的に戻ることもあるからで、これが「寒の戻り」と言われるもので、体調管理に注意が必要です。

 

春一番という言葉には春の訪れを感じさせる響きがありますが、実際には春一番は春の嵐をもたらす恐るべきものなのです。皆さんも気象情報を確認して、災害への備えをするようにして下さい。