九州沿岸ではこれから春にかけて「あびき」が発生しやすくなるため注意が必要です。
あびきとは、海面が数分から数十分の周期で昇降を繰り返す副振動のことです。気象現象などに伴う気圧の急変によって起こり、大きな副振動が発生すると、潮位の上昇に伴って海岸や河口付近が浸水、係留船舶の流出や転覆などの被害が発生する恐れがあります。
副振動は全国的に見られる現象ですが、特に九州西岸で発生しやすく、九州地方では魚網が流されてしまう「網引き」に由来して「あびき」と呼ばれています。
九州では冬から春先にかけて、あびきが集中的に発生する傾向にあります。理由は春先にかけて大陸東岸で低気圧や前線が発生しやすくなるためで、この低気圧による気圧の急変があびきをもたらすとされています。
ただ、東シナ海に低気圧や前線があると、必ずあびきも発生するという訳ではありません。高気圧に覆われた穏やかな日に突然起こることもあり、あびきは予測が非常に難しい現象です。
観測史上最大のあびきは1979年3月31日に長崎県の長崎検潮所で観測されたもので、最大全振幅(海面昇降の谷から山までの高さ)は278センチに達しました。
また、近年では2019年3月21日に長崎港であびきが発生し、長崎市中心部が冠水したり、家屋や飲食店など数十棟が浸水したりするなどの被害がでました。
あびきは予測が難しい現象ですが、被害が発生する恐れがある場合は、気象台や測候所が潮位情報や高潮警報・注意報を発表します。情報が発表された場合は十分注意をし、対策をとるようにしてください。
参考
長崎地方気象台ホームページ 副振動(あびき)
長崎新聞 “長崎港で「あびき」最大105センチ 家屋や飲食店浸水” (2019.3.22)