気象トピックス・コラム
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終戦の日

 

きょうは、終戦の日です。

 

私の亡き祖父は、戦争中に兵隊として徴兵されました。子供のころ、祖父に戦争の話を聞いても詳しくは語らず、泥水のうわ水をすすって飲んで生きながらえたという話だけを何度も聞かされました。今思えば、あまり思い出したくない暗黒の時代だったのでしょう。

 

ところで、戦争中は各地の天気や気温などの観測データは国民に伝えられることはありませんでした。天気予報は軍事機密のひとつだったため、太平洋戦争中は天気予報の放送を停止していたのです。1941年12月8日のハワイの真珠湾攻撃を機に、ラジオからの天気予報は放送されなくなりました。太平洋戦争が終わり天気予報の放送が再開されたのは、終戦から1週間後の1945年8月22日です。3年8か月ぶりに天気予報がラジオで放送されました。

 

ところが、終戦直後の1945年9月に枕崎台風と呼ばれている昭和20年台風第16号が襲来し、多くの犠牲者をだしました。死者行方不明者が3000人を超えた中、2000人以上が原爆の投下された広島県の方々だったといわれています。

 

原爆による壊滅的な被害を受け通信網が破壊される中、観測や調査を続け、データを中央気象台に打電しようとした広島気象台職員の生きざまを描いたノンフィクション小説「空白の天気図」(著者:柳田邦男)は、気象情報を伝えることの大切さを今の時代にも伝えています。

 

気象災害は現代でも発生しますが、私たちは毎日、テレビやラジオ、スマートフォンなどで天気予報を見ることができます。これはとても有り難いことで、日本が戦争のない平和な国であるということの証でもあるのです。