気象トピックス・コラム
貴重な晴れ間の落とし穴~小春日和と疑似晴天~

「小春日和」という言葉があります。「小さい春」とかいて「小春」です。「春」という言葉が入っているので、春のことを表現しているのかと勘違いしてしまう方もいらっしゃるかと思いますが、「小春」というのは、旧暦の10月のことをいいます。


「日和」は穏やかな晴天を意味しますので、「小春日和」とは、「旧暦の10月の穏やかに晴れた日」という意味です。「旧暦10月」がゆえに年によっても異なりますが、小春日和はだいたい晩秋から初冬にかけての穏やかに晴れて日差しに温かさを感じられる天気のことを言うのです。

これからの季節は、冬型の気圧配置となる日が多く、頻繁に寒気が流れ込んでくるようになります。そうすると、日本海側ではしぐれる日が多くなり、穏やかな晴天は少なくなっていきます。太平洋側でも、木枯らしと呼ばれる冷たい風が吹く日が多くなり、暖かく穏やかな晴天がまれになってきます。


小春日和は穏やかですが、油断ができません。冬型の気圧配置が続く中でも小さな気圧の谷が通過する直前に風が弱まり、日本海側の地方や山岳地帯でも雪や雨がやんで晴れてくることがあります。これを「疑似晴天」といい、その小さな気圧の谷が通過すると再び荒れ模様の天気になることがあります。太平洋側でも一度弱まった木枯らしが再び急に強まります。


この疑似晴天を天気の回復と誤って行動し、海や山での事故も起きています。風や波、雪に関する注意報や警報が発表されている間は注意を怠らないようにしたいものです。

初冬は秋と違い穏やかな秋晴れが続くことは少なく小春日和は貴重です。気象情報をうまく利用して、小春日和を楽しみ、冬支度に役立てて下さい。