季節が冬から春へと移り変わる時、最初に吹く強い南風を春一番と呼びます。
春の訪れを告げる風ということで、暖かく穏やかなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は春の嵐をもたらす危険な強風で、転倒や車の横転事故、停電や交通麻痺など、生活に様々な影響をもたらす恐れがあります。
今年は2月10日に、九州南部・奄美地方で春一番が吹いたと発表がありました。去年より36日早い観測で、全国トップの発表となります。
気象庁では春一番を「立春から春分までの間で、日本海で低気圧が発達し、初めて南よりの強風(8m/s以上)が吹き、気温が上昇する現象」と定めていますが、気圧配置や風速、気温の定義は、各地域によって少しずつ異なります。基準を満たす風が吹かない場合は春一番の発表がなく、去年は近畿や中国、四国、九州北部で発表なしとなりました。
なお、北海道と東北、沖縄は元々春一番の発表がありませんが、これらの地域は強い南風が吹いても、必ずしも春らしい天候にならないためです。
春一番の語源は諸説ありますが、長崎県壱岐市の郷ノ浦では命を奪う風として伝えられています。1859年旧暦2月13日、出漁した漁師53人が強い突風により犠牲となった海難事故が起こりました。この時から地元の漁師たちが、春の強風を「春一」「春一番」と言って恐れるようになったとされています。地元には「春一番の塔」が建てられ、自然の怖さを忘れないようにとの思いが込められています。
春の強風は、こうした海難事故だけでなく、転倒・転落事故、住宅の破損や停電、時に火災の延焼など様々な災害を引き起こす恐れがあります。また、春一番の後は寒の戻りがやってきて、急激な温度変化が起こることも多いです。これから春に向けて風が強まる季節となりますので、天気や気温の変化に合わせ、強風にも十分注意をしてお過ごしください。