気象現象
気象庁や地方気象台の発表する風の予報は、その表現の仕方でどのような風が吹くのかがわかります。
たとえば、天気予報で、「やや強く」という表現があるときは、おおよその目安として、10m/s以上15m/s未満の風が吹くと予想されているときです。「やや」という言葉には、「少しばかり」という意味があるのでそれほど強くないように聞こえますが、時速にすると40km~50kmくらい、一般道路を自動車が走るくらいのスピードです。木全体が揺れだして、人は風に向かって歩きにくくなり、体感的には十分強いと感じる風です。また、車を高速で運転していると、横風に流される感覚を受けるようになります。
「やや」がなくなり「強く」という表現になると、15m/s以上20m/s未満の風になります。時速にすると50km~70kmくらいです。看板やトタン板が外れはじめ、人は風に向かって歩けなくなり、転倒する人もでてくるようになります。高い所での作業は極めて危険です。また、車を高速で運転していると、横風に流される感覚がさらに大きくなってきます。
「強く」が「非常に強く」になると、20m/s以上30m/s未満です。時速にすると70km~110kmくらいになります。看板が落下して飛散し、道路標識が傾くこともあります。人は何かにつかまらないと立っていられなくなり、飛ばされてきた物によって、怪我をすることもあります。また、通常の速度での車の運転は困難となってきます。
30m/s以上は、「猛烈な風」です。時速110km以上で、例えると特急電車並みのスピードです。多くの樹木が倒れるほか、ブロック塀や住家でさえ、倒壊する場合もあります。人は屋内にでるのは極めて危険なため、外出は控える必要があります。走行中のトラックが横転するなど、車の運転そのものが困難になります。
風の予報で使われる風速は、「平均風速」と呼ばれるもので、10分間に吹いた風を平均したものです。しかし、風の吹き方は一定ではなく、瞬間的には、この風速の1.5倍から2倍、ときには3倍以上の風が吹く場合もあります。また、大気の状態が不安定で落雷などの恐れがあるときや、地形の影響で風が集まりやすい場所では、思わぬ突風が吹くこともありますので注意が必要です。
実際に、2015年台風21号では、9月28日に沖縄の与那国島地方で風速54.6m/sの猛烈な風を観測しましたが、そのときには、最大瞬間風速81.1m/sと風速のおよそ1.5倍の強さの風が吹きました。これは、与那国島の観測史上1位の記録となっています。このときの与那国町では、家屋の倒壊・破損が合わせておよそ400件あり、約1000戸が停電したほか、通信障害も発生するなど大きな被害がでています。