気象トピックス・コラム
気象現象
移流霧が生み出す隠れ避暑地

空気中の水蒸気が地表に細かい水滴となって浮かんでいる状態を「霧」や「もや」と呼びます。「霧」は水平で見通せる距離が1キロメートル未満、「もや」は1キロメートル以上です。

北海道の太平洋側に位置する「釧路」は、有人の気象観測所(※)の中で年間霧日数が日本で最も多く、年間に96.9日とおよそ100日あります。特に6月~8月は、霧日数の平年がおよそ16日と月の半分以上になるのです。
(※現在、気象官署の職員による目視観測は東京・大阪のみ。釧路の目視観測は、2020年2月3日まで。以後、自動観測)


この霧の原因は、北海道の太平洋側の冷たい海流である親潮と、太平洋の高気圧からの暖かく湿った空気です。釧路周辺の海域の海水温の平年値は、6月が8℃~11℃くらい、7月が13℃~15℃くらい、8月が17℃くらいと、とても低いのです。


夏は、太平洋高気圧からの暖かく湿った空気が北海道にまで流れ込むことが多くなります。この空気が、釧路沖の冷たい海面(親潮)を渡るときに冷やされることで、空気に溶け込む水分が飽和し、「移流霧」と呼ばれる濃い霧が発生するのです。

釧路はこの期間の気温も低く、最高気温の平年値は16℃~22℃くらいです。札幌のこの時期の平年値が22℃~26℃くらい、比べてみるとかなり涼しいのがわかります。長袖や上着があった方が良いくらいで、ときには寒いくらいになるのです。


霧に浮かぶ街灯や灯台の明かりが、幻想的な風景を生みだし、釧路は「日本のロンドン」と呼ばれています。さんさんと照りつける太陽が苦手な方や、暑い夏が苦手な方にとっては、霧に覆われた幻想的な釧路の夏は、かえって過ごしやすくて良いかもしれません。釧路は天然の避暑地といえそうです。