気象トピックス・コラム
大晦日
遠くの寺から響きわたる除夜の鐘 〜音と気温の関係〜

年越しの定番ともいえる除夜の鐘。なぜ、大晦日に百八つの除夜の鐘をつくのでしょうか?

それには諸説ありますが、代表的な説は、「煩悩説」です。人間にある「眼、耳、鼻、舌、身、意」の6つの感官能力を六根といいます。それらの感じ方は、「好、平、悪」の3種類がありますが、さらに、その3種類の解釈は、「染、浄」の2種類があります。これらが原因で、人間は、「現在、過去、未来」の三世にわたり悩みや苦しみが続く、と考えられています。これを掛け合わせると、「六根」の6×「好、平、悪」の3×「染、浄」の2×「現在、過去、未来」の3となり、合わせてと百八になるのです。


除夜の鐘は、大晦日の深夜24時の前後に耳にしますが、鐘をつくタイミングにも決まりがあります。百七つまでは、前年のうちにつき、最後のひとつは、新年になってから(深夜0時ちょうど)につくのが正式なつき方だそうです。百八つの煩悩をすべてきれいに祓って新しい年を迎えるといった意味合いがあるのでしょう。


除夜の鐘は夜につくので、昼間には聞こえてこない遠くのお寺からでも聞こえてくることがあります。晴れて気温の低い大晦日の夜にはこういったことが起こります。「音」と「気温」には関係があるのです。


音は、空気中の温度が高いと「速く」進み、低いと「遅く」進む性質があります。そしてもう一つの原因として「音の屈折」があります。地上付近より上空の気温が低い昼間は、音の屈折角が緩やかな角度から次第に急な角度になりながら上空に進み、音は地上付近から逃げるため、音の届く距離は近くなります。一方、放射冷却が強まり上空の気温より地上付近の気温が低くなる夜間は、屈折角は急な角度から緩やかな角度になり、次第に下向きに曲がるため、地上付近での音の届く距離が遠くなります。その他、風速などの要因もありますが、放射冷却の効果が強まる冬の晴れた夜には、音が遠くまで届きやすくなるのです。

「ゴーン」という音がとても心に響き渡るような「除夜の鐘」の音を聞きながら煩悩を払い、快く新年を迎えたいものですね。