気象トピックス・コラム
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晩霜から農作物を守るために

 

「♪ 夏も近づく八十八夜・・・」初夏に見られる茶摘みの光景を歌った歌ですね。一番茶の新芽が出葉する八十八夜の頃まで、農家の皆さんはお茶や育ち始めた農作物に深刻な影響を与える「晩霜(春先におりる霜)」の被害を最も恐れていることと思います。

 

農作物を霜から守るための対策には、燃焼法・送風法・散水氷結法などがありますが、そもそも霜がおりやすい条件というのはあるのでしょうか?春や秋に移動性高気圧に覆われるなどして、よく晴れて風がない夜は、地表付近に冷たい空気がたまって気温が3℃近くまで下がることがあり霜がおりやすくなります。特に盆地や谷底などは冷気が貯まりやすく霜がおりやすい場所です。地表はその温度に対応して赤外線を放出して冷却するとともに、大気や雲からの赤外線を受けて暖まっていますが、水蒸気が少なく雲がない夜間には、大気や雲からの赤外線が少なくなるため、地表面は冷えてきます。これを放射冷却と言います。この時期の天気予報で「移動性高気圧に覆われてよく晴れる、風がない、放射冷却」などの言葉が出てきたら注意が必要です。

 

また、霜害から農作物を守るには、霜害が発生する危険性を事前に知ることも重要です。

・霜注意報

農家の方でしたら皆さんご存知の情報ですが、その対象地域にはやや注意が必要です。その理由は、霜注意報は気象庁既定の区域(※)を対象として発表されますので、対象地域に含まれる市町村全てが対象とは限らないのです。例えばお茶の主要産地である静岡県牧之原市の場合、気象庁の発表区域は、静岡市南部、藤枝市、島田市、焼津市、吉田町、牧之原市全てを対象としています。

・異常天候早期警戒情報

こちらも気象庁から発表される情報で、関東甲信地方などの広い地域を対象として、発表日の5日後から14日後までの気温の傾向を確認することが出来ます。具体的には、2週間後までにその時期としては10年に1度程度しかおきないような、かなり高い(低い)気温が予想されるときに発表される情報です。

 

民間の気象会社では、霜予測や異常天候早期警戒情報について、より細分化した区域を対象として独自予報を提供しているところもありますので、このようなサービスを合わせて利用してもよいかもしれません。

 

※:災害特性や都道府県の防災関係機関等の管轄範囲などを考慮してまとめた区域